ローラチェーンの摩耗伸びの測定方法:ISO 606、計算式、交換基準 - MAXTOP

ローラチェーンの摩耗伸びの測定方法:ISO 606、計算式、交換基準

2026-09-17更新

ローラチェーンの摩耗状態を管理するうえで、MCCでは「摩耗伸び率」を重要な判断指標の一つとしています。

ここでいう「摩耗伸び」とは、プレート自体が引き伸ばされる現象ではありません。主にピンとブシュの摺動部が摩耗し、すき間が大きくなることで各ピッチが徐々に増加し、その累積がチェーン全体の伸びとして現れます。

摩耗伸びが進行すると、チェーンとスプロケットの噛み合いにも影響を与え、振動や騒音、スプロケットの異常摩耗などにつながることがあります。

本記事では、

  • 測定長さ
  • 測定時の張力(測定荷重)
  • リンク数とピッチ

を明確にしたうえで基準長さを求め、実測値から摩耗伸び率を算出する方法を紹介します。

また、1回の測定値だけで判断するのではなく、定期的に測定を行い、摩耗伸び率の変化を確認することで、チェーンの摩耗状態や交換時期を判断する方法についても説明します。新品チェーンの長さ確認および測定条件については、国際標準化機構(ISO)の関連規格を参考としています。

摩耗伸びを管理する理由

MCCの現場経験では、摩耗によるチェーン性能の低下には、事前に確認できる変化が現れることがあります。

その中でも、摩耗伸び率は比較的数値化しやすく、チェーンの状態を把握するための指標として使用できます。

摩耗によってピッチが大きくなると、チェーンとスプロケットの間で次のような現象が起こりやすくなります。

  • 噛み合いが悪くなる
  • 衝撃や振動が増える
  • チェーンがスプロケットに乗り上げる
  • 摩耗が進むと、歯飛びやスプロケットの異常摩耗につながる

音や運転時の感覚だけで判断すると、担当者によって評価が異なる場合があります。

一定の条件で摩耗伸び率を測定し、数値として記録することで、チェーンの状態をより客観的に管理できます。

MCCでは、用途や使用条件に応じて、例えば以下のような交換判断の目安を設けています。

  • 0.8~1.0%: 精密伝動用途
  • 1.5%: 一般的な動力伝動用途
  • 2~3%: 搬送用途

また、定期的な測定結果を記録し、摩耗伸び率の推移を確認することで、交換時期やメンテナンス計画の検討にも活用できます。

関連規格と参考基準

MCCでは、新品チェーンの長さ確認については国際規格を参考とし、使用中のチェーンについては実際の用途や運転条件を考慮して管理しています。主な参考規格は以下のとおりです。

ISO規格 (ISO 606:2015)

短ピッチ精密ローラチェーンの寸法、測定条件、長さの確認方法などが規定されています。

例えば、

  • 測定長さ:チェーン番号により、610 mm以上または1,220 mm以上
  • 測定時期:プリロード後、潤滑前
  • 長さ公差:呼び長さに対して0~+0.15%

などが定められています。

ANSI / ASME (ASME B29.1)

ローラチェーンおよびスプロケットの基本構造や寸法体系を規定しています。

DIN規格 (DIN 8187 / DIN 8188)

欧州仕様の設備で広く使用されており、ISO規格との対応関係があります。

台湾 CNS (CNS 2222)

台湾における調達や図面仕様の参考規格として、ピッチやリンク数などが規定されています。

ローラチェーンの摩耗伸びが発生する仕組み

チェーンの運転中、ピンとブシュの間では摺動や揺動が繰り返されます。そのため、ピンとブシュの接触部はローラチェーンの主な摩耗箇所の一つです。

潤滑が十分であれば、ピンとブシュの直接接触を抑え、摩耗を軽減できます。一方、潤滑が不足している場合や給油間隔が長すぎる場合は、ピンとブシュの摩耗が進みやすくなります。摩耗によってすき間が徐々に大きくなると、各リンクのピッチがわずかに増加します。この増加がチェーン全体に累積したものが「摩耗伸び」です。

ただし、何%伸びたら必ず交換するという一律の基準がすべての設備に適用できるわけではありません。精度が求められる伝動用途では比較的低い摩耗伸び率を交換基準とする一方、搬送用途ではより大きな伸びが許容される場合があります。実際の交換時期は、用途、負荷、速度、スプロケット歯数、運転条件などを考慮して判断する必要があります。

ローラチェーンの摩耗伸びの測定方法

  1. チェーンをまっすぐにし、測定荷重を加える
    ここでは180HVチェーンを例とします。180HVチェーンのピッチは57.15 mmです。測定条件をそろえるため、MCCではISO 606におけるチェーンNo.180(単列)の新品チェーンの長さ確認条件を参考に、2,670 N(約272 kgf/600 lbf)の測定荷重を加えます。
  2. 6~10リンク程度の区間を測定する
    測定誤差をできるだけ少なくするため、下図のように6~10リンク程度の区間でL1とL2を測定します。
    ローラチェーンの摩耗伸び測定方法。6リンク区間のL1とL2を測定
  3. チェーンの実測長さLを求める
    L = (L1 + L2) / 2
  4. 基準長さL(nom)を求める
    180HVチェーンを6リンク測定する場合:L(nom) = 57.15 mm × 6
  5. 摩耗伸び率を計算する (%)
    摩耗伸び率(%) = (L − L(nom)) / L(nom) × 100
  6. 交換基準と比較する
    本例では一般的な動力伝動用途を想定し、MCCでは1.5%を交換の目安としています。

摩耗伸び率の計算例:180HVチェーン

6リンクを測定した結果、以下の値になったとします。
L1 = 314.4 mm
L2 = 385.6 mm

  1. 実測長さLを計算
    L = (314.4 + 385.6) / 2 = 350 mm
  2. 基準長さL(nom)を計算
    L(nom) = 57.15 mm × 6 = 342.9 mm
  3. 摩耗伸び率を計算
    摩耗伸び率(%) = (350 − 342.9) / 342.9 × 100= 7.1 / 342.9 × 100= 0.0207 × 100= 2.07%
  4. 交換基準と比較する
    2.07% > 1.5%
    今回の測定値は、MCCが一般的な動力伝動用途で交換の目安としている1.5%を超えています。そのため、この場合はチェーンの交換を推奨します。

MCCにおける摩耗伸びの管理

MCCでは、摩耗伸び率を定期的に測定し、その変化を記録することを推奨しています。

同じ条件で測定を続けることで、前回の測定結果と比較しながら摩耗の進み方を確認できます。摩耗伸びが短期間で大きくなった場合は、チェーンだけでなく、潤滑状態、負荷、スプロケットの状態もあわせて確認する必要があります。

こうした測定記録は、チェーンの交換時期や設備のメンテナンス時期を検討する際の参考になります。

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