ローラチェーンが高湿度や塩分を含む環境(海洋設備、屋外機械、食品加工ラインなど)で使用される場合、耐食性に優れたチェーンの選定が求められます。
MCC では、過酷環境下での信頼性向上を目的に、塩水噴霧試験による防食性能の確認と、用途に応じた防錆コーティングをご用意しております。
本記事では、これらの取り組みがチェーンの長寿命化やダウンタイム低減にどのように寄与するかについて解説いたします。
ローラチェーンに防食対策が必要な理由
炭素鋼ローラチェーンは高い強度と耐摩耗性を備える一方で、腐食環境には弱いという特性があります。湿気、塩分、化学薬品、酸・アルカリに曝されることで次のような問題が発生します:
- 摩耗加速・強度低下:腐食により表面および内部構造が損傷し、精度や負荷容量に影響を及ぼします。
- 寿命短縮:防錆対策のないチェーンは湿気や屋外環境で急速に劣化します。
- 保守コスト増加:交換頻度や潤滑作業の増加により、ダウンタイムと人件費が増加します。
そのため、防食性能を備えたチェーンの選定は、総保有コスト(TCO)削減に不可欠です。
耐食性評価のための塩水噴霧試験
塩水噴霧試験とは?
塩水噴霧試験は、密閉チャンバー内に塩水ミストを連続噴霧し、腐食環境を加速的に再現する評価方法です。試験片に腐食が発生するまでの時間を指標とします。
一般的な国際規格は以下のとおりです:
- ASTM B117:ASTM によって制定され、1919 年に試験方法が使用開始。1962 年に正式規格化され、現在も世界で最も広く採用されている塩水噴霧試験規格。MCC は全試験でこの規格を採用しています。
- ISO 9227:国際標準化機構(ISO)による規格で欧州での採用が多く、ASTM B117 と一部手順が異なります。
| 項目 | ASTM B117 | ISO 9227 |
|---|---|---|
| 塩水比重(25°C) | 1.024286–1.037261 | 1.029–1.036 |
| 塩分濃度(g/L) | 53 ± 10.6 g | 50 ± 5 g |
| 純水導電率(25°C) | 最大 5.0 µS/cm | 最大 20 µS/cm(±2°C) |
| 不純物制限 | 総不純物 ≤ 0.3%ハロゲン化物(Br⁻, F⁻, I⁻)≤ 0.1%銅 < 0.3 ppm無固結防止剤 | 総不純物 ≤ 0.5%Cu + Ni + Pb ≤ 0.005%(50 ppm)ヨウ化ナトリウム ≤ 0.1%無固結防止剤 |
| 試験片角度 | 15–30° | 15–25° |
| 塩水濃度 | 5% | 5% |
| pH | 6.5–7.2 | 6.5–7.2 |
| 温度 | 35 ± 2°C | 35 ± 2°C |
| 沈降量 | 1–2 ml/h(80 cm² あたり) | 1–2 ml/h(80 cm² あたり) |
塩水噴霧試験の仕組み
塩水噴霧試験機は主にタワー型エアフロースプレー方式を採用しています。
その動作原理は以下の通りです:
- 外部から供給される圧縮空気がノズルへ送られ、高速気流を形成。
- 気流が食塩水供給管上を通過する際、負圧が発生し食塩水が吸い上げられる。
- ノズルにより霧状(ミスト)に噴霧される。
- ミストが試験槽内に均一に拡散し、試験片全体の表面が均等に塩霧環境へ曝される。

Salt Spray Test Machine

この方式により、試験片全体が均一な塩霧環境に曝され、安定した評価結果を得ることが可能となります。
塩水噴霧試験結果の例
例えば、MCC の NP(ニッケルメッキチェーン) は、湿潤環境や軽度腐食環境での性能評価のため塩水噴霧試験を実施しています。
その結果は、用途に適した最適なコーティング選定の重要な判断材料となります。

MAXTOP が提供する防食コーティング
MCC は様々な環境向けに設計された炭素鋼ローラチェーン用の防錆コーティングを提供し、高い引張強度と耐食性を両立しています。
CRF コーティング
- 優れた耐食性を備えています。
- 高温・低温環境に対応します。
- クロムフリー・有害金属フリー(RoHS・ELV・REACH に適合)
- ステンレスチェーンよりコスト効率に優れ、腐食環境下で高い防錆性能を発揮します。


亜鉛ニッケル合金メッキ(GN)
- ステンレス調の外観を持つ電気亜鉛ニッケル合金を採用しています。
- 一般的な亜鉛メッキ・ニッケルメッキより高い耐食性を備えています。
- 強度は炭素鋼チェーンと同等です。
機械亜鉛メッキ(MZP)
- 電気メッキではなく機械式プロセスのため、水素脆化の懸念がありません。
- 三価・六価クロムを使用していません。
- 良好な耐食性を備え、強度は炭素鋼チェーンと同等です。
ニッケルメッキ(NP)
- 最も広く使用されている装飾用途のメッキです。
- 湿潤環境や軽度腐食環境に適しています。
- 強度は炭素鋼チェーンと同等です。
防食コーティング比較
| コーティング | 主な特長 | 塩水噴霧試験(ASTM B117) | Hydrogen Embrittlement | Strength vs. Carbon Steel |
|---|---|---|---|---|
| CRF | 高耐食・環境配慮 | 600 時間以上 | 無 | 5~10% 低下 |
| GN | 高耐食・ステンレス調外観 | 500 時間以上 | 無 | 同等 |
| NP | 装飾メッキ・中程度耐食 | 約 20 時間 | 無 | 同等 |
| MZP | 無クロム・機械メッキ | 60 時間以上 | 無 | 同等 |
長寿命チェーンのための最適コーティング選定
塩水噴霧試験と防食コーティングは、過酷環境でローラチェーンの信頼性を確保するための重要な手段です。
MCC は ASTM B117 に準拠した評価と多様なコーティング選択肢により、耐久性向上・保守削減・長期的な設備安定稼働をサポートします。
チェーンの正しい選び方
作業環境(温度・湿度・清浄度)に応じたチェーン選定は、寿命延長と安定稼働に直結します。
- 温度条件
- 高温環境:強度維持と潤滑安定性を確保できるチェーンを選定
- 低温・冷凍環境:脆化を防ぎ、低温でも滑らかに動作する設計が必要
- 湿度条件
- 高湿度・水分環境:防食コーティングや自己潤滑チェーンが有効
- 乾燥・屋内環境:標準チェーンでも保守次第で十分対応可能
- 清浄度・異物環境
- 食品・電子・医薬:低潤滑・クリーン仕様チェーン
- 粉塵・屋外:密閉構造や防塵性の高いチェーンが寿命延長に有効
- 保守性・寿命要件
- 手の届きにくい場所:長寿命・自己潤滑チェーンが最適
- 洗浄頻度の高い設備:耐水・耐薬品性の高いチェーンが必須
- コストと性能のバランス
- 過剰仕様はコスト増につながるため、環境条件に合った適切なチェーン選びが重要です。
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